受賞者インタビュー



ICTの発展はサイバーセキュリティ啓発あってこそ

Web・コンテンツ部門 優秀賞

サイバーセキュリティ仕事ファイル ~みんなが知らない仕事のいろいろ~

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サイバーセキュリティアワード2023(授賞式は2024年3月15日に開催)の受賞者に“その後”を聞くインタビュー・シリーズ。Web・コンテンツ部門 優秀賞を受賞した「サイバーセキュリティ仕事ファイル~みんなが知らない仕事のいろいろ~」を企画・制作した株式会社ラック サイバー・グリッド・ジャパンICT利用環境啓発支援室 啓発企画グループマネージャーの高橋 怜子さんは、「ICTを利用する側が自分で自分を守ることの大切さを伝えていきたい」と志を新たにしている。(聞き手はサイバーセキュリティアワード事務局、以下敬称略)

——拝読して、「サイバーセキュリティ関連の仕事にはこういうものもあるのか!」と驚きました。インシデントハンドラー、コンピュータフォレンジッカー、脅威情報アナリスト・・・などなど。

高橋

私が所属しているのはICT利用環境啓発支援室という部門なのですが、ICTを安全に利用するための普及啓発活動の一環として、小学校から大学までの生徒さん・学生さんを対象に情報セキュリティや情報モラルなどの出張講座を開催しています。受講者のみなさんと話していると、サイバーセキュリティという言葉は聞いたことがあるけれども、それが実際にどういうものなのか、何のためにあるのか、その分野で働いている人たちの仕事を具体的に想像できない、といった声をよく聞くんですね。ならば、サイバーセキュリティの仕事をまとめた冊子をつくって、みんなに知ってもらおうということになったのです。主な読者層として小学校高学年を想定しました。これから社会に羽ばたいていく子供たちに、仕事という切り口でサイバーセキュリティに興味をもってもらえたら良いなと気持ちで取り組みました。そこで、国語ではどういうことを習っているのか、その年頃の子供たちがどういうものを読んでいるのかなどを調べ、小学校で教鞭をとられたことのある学校教育の専門家に監修していただいて子供たちに分かりやすい言葉遣いや表現としました。小学校の教科書の書体を使い、難しい漢字にはカナを振るなど、細かいところまで気を配りました。制作期間は①、②それぞれに1年以上かかりました。まず、どういった職種を取り上げるかを、サイバーセキュリティの専門家の先生とも相談しながらリストアップし、当社社員に依頼したり、出張講座関連でお世話になっている方々にお声がけしたりしてインタビューを重ねていきました。最終的にはそれぞれ12職種、合計24種類の仕事を掲載することになりました。

——読者からの反響はいかがでしたか?

高橋

冊子完成後には、インタビューを受けていただいた方々から「自分の子供に読ませたい」「母校で配布したい」といったご要望をいただいたり、当社役員から「このような、子供向けにサイバーセキュリティを伝える冊子が欲しかった!」という言葉をいただいたりと、各方面から暖かい反応をいただきました。あと、想定していなかったのですが、就職活動中の大学生や専門学校生、新入社員といった層からとても良い評価をいただきました。就活生から、「サイバーセキュリティ企業にはこういう職種があるということを知ることができました」「入社したらこういう仕事をやりたいと思いました」という声が寄せられたのです。当社の人事担当から聞いたところでは、それがきっかけとなって当社への入社を決めてくださった学生さんもいらっしゃったようです。予想外の副産物だったのですが、お役に立ててとても嬉しく思いました。

——サイバーセキュリティは揺籃期ですから、まだ名前がついていない仕事もあったのでは?

高橋

まさにその通りなんです。実は、インタビューで職種名を聞くと「そういえば、特に決まったものがない・・・」と悩まれる方がけっこういらっしゃいました。お話を伺いながら「では、これにしておこう」とご提案をいただくこともありました(笑)。例えば「ゲームセキュリティ診断士」というのはゲームのチート(不正行為)を発見する仕事なのですが、これはインタビューの際に先方に発案していただいた名前です。創世期にあるサイバーセキュリティの世界では新たな仕事が次々に生まれているということを垣間見ることになりました。

——「啓発企画グループマネージャー」という高橋さんの肩書もユニークですね。

高橋

ICT分野の変化・進歩はとても急なので、サイバーセキュリティの知識を常にアップデートしていくことはすべての人々にとって重要です。この小冊子を通して、「インターネットを安全に使えるのは裏側でいろんな人たちが守ってくれているから。でも、利用する側が自分で自分を守ることも大切」ということが、多くの人に伝われば良いなと思っています。最近では、闇バイトのようなICTを駆使した犯罪やSNSが及ぼす弊害などが深刻な社会問題になっています。テレビや新聞の報道に触れず、SNSが唯一の情報源になっているような若者に対して、どのようにサイバーセキュリティの啓発活動を行っていけば良いのか——。今後の大きな課題だと思っています。

——ICTの発展は、技術・サービスの革新とサイバーセキュリティ啓発がセットでなければならないということですね。ありがとうございました。

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