次のテーマは安心安全な情報活用のための仕組みづくり
——受賞をどのように受け止めていますか?
piyokango
本名や所属を公表せずハンドルネームで活動している私のような者をアワード対象に選んでいただいたことに対して、良い意味で驚くとともに深く感謝しています。私と同じような事情を持つ方々にとって、サイバーセキュリティアワードは魅力ある取り組みだなと感じました。
セキュリティインシデントのまとめブログ「piyolog」はもう15年くらい続けているのですが、今回のサイバーセキュリティアワードの受賞は2017年に「サイバーセキュリティに関する総務大臣奨励賞」を頂いて以来のことで、私自身のモチベーション維持のうえで非常に重みがあります。これまで続けてきて良かったなと改めて思いました。ブログ読者の皆さんからもポジティブなコメントを頂き、励みになっています。
——2009年にpiyologを始めた動機は?
piyokango
元々は自分自身の勉強のためでした。サイバーセキュリティ関連のいろいろな勉強会に参加していたのですが、その内容を自分の頭でしっかり咀嚼・理解するため、整理して、感想をつけて、記録に残したいと考えたのが発端です。勉強会の主催者がブログなどでの発信を奨励していたということも後押しになりました。それが高じて、勉強会にとどまらず、世の中に流れているサイバーセキュリティ関連の情報を整理し、まとめ、発信することへとスコープが広がっていきました。というのも、10年くらい前まではサイバーセキュリティがらみの情報は断片的で、全体像や深層を理解することが容易ではなく、時にはあまり詳しくない方が発信されていて情報そのものに曖昧さや誤りが含まれているようなことがあったからです。最初は自分が知りたいことを調べてそのまま書いていたのですが、最近は少し変わってきています。「自分の興味・関心ために」というのはモチベーションの源なのですが、「他の人の役に立つかもしれない」という動機付けがかなり大きくなってきたように思っています。ですから、内容に関して誤ったことを書かないということを強く意識していて、主観的な感想のようなことをなるべく書かないように心がけています。私が整理してまとめたブログを読まれた方が、その方なりの解釈を加えて新しいコンテンツとして発信していく。それを私が読ませていただき、また新しい気づきに繋がっていく——。そんなウィンウィンの流れができると良いなと願いながら活動を続けています。ですから、ブログ読者の方からのコメントやSNSでの反応などは、よくチェックするようにしています。「ここは間違っているんじゃないか」というご指摘をいただくこともあって、そういう時は可能な限り速やかに確認して修正するように心がけています。
——サイバーセキュリティへの理解度、認知度に対する問題意識は?
piyokango
最近「怖いな」と思っているのは、目の前の情報が正しいのか正しくないのかということを常に意識していなければならなくなってきたことです。以前と比べて、誰もが情報を発信できるようになりました、しかもいろんなやり方で。それは歓迎すべきことだと思います。しかし、発信されたコンテンツが本物なのか、どれだけの正確性が担保されているのかという点については怪しさが増す一方です。生成AIを使えば、一昔前ならプロフェッショナルしか作れなかったようなコンテンツが簡単に出力できてしまう。今この瞬間に見ている情報が本物なのか偽物なのかということを見る側が常に意識して、判別しなければならなくなっているのですが、多くの人々はそこまで用心深く情報に接していません。その認識の甘さが悪用されるようなことがなければいいなと願うのですが、これだという対応策が見当たらない。とても悩ましいところです。私としては、誤りのない情報を発信すること、正しい情報なのかどうか客観的に判断することの重要性を、引き続きpiyologで発信していきたいと思っています。ただ、偽情報は増え続けていて、簡単に駆逐できるような状況ではなくなってきているので、注意喚起の在り方を含め、安心安全に情報を活用するための新たな仕組みづくりにもしっかり関わっていいきたいと考えています。
——piyokangoさんの取り組みが新しいステージに向かっているようですね。
piyokango
そうですね。私ひとりで頑張っても限界があるので、それこそ生成AIを使って自動化・省力化できることではうまく乗っかれればと思います。人海戦術に頼るのではなく、仕組みを考案し、システム化することによって、良いコンテンツを増やし、悪いコンテンツを駆逐するような状況を作り出せると信じています。最後になりましたが、そうした新たな挑戦に光を当て顕彰するサイバーセキュリティアワードは、これからも長く続けていただきたいと願っています。
——ありがたいエール、ありがとうございます!piyokangoさんのご健闘を祈っております。
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サイバーセキュリティアワード2023(授賞式は2024年3月15日に開催)の受賞者に“その後”を聞くインタビュー・シリーズ。Web・コンテンツ部門 最優秀賞を受賞した「piyolog」の執筆者piyokangoさんは、「安心安全に情報を活用するための新たな仕組みづくりに取り組んでいく」と次の展開を語る。(聞き手はサイバーセキュリティアワード事務局、以下敬称略)