受賞者インタビュー



サプライチェーン全体のセキュリティ強靭化を支援

Web・コンテンツ部門 優秀賞

華麗なる情報セキュリティ対策

作品紹介サイト

サイバーセキュリティアワード2023(授賞式は2024年3月15日に開催)の受賞者に“その後”を聞くインタビュー・シリーズ。Web・コンテンツ部門 優秀賞を受賞した「華麗なる情報セキュリティ対策」を監修した独立行政法人情報処理推進機構の中島 尚樹さん(IPAセキュリティセンター 相談・支援グループリーダー)と、サイバーセキュリティの啓発動画を企画する藤井 明宏さん(同普及啓発グループ)は、「サプライチェーン全体の強靭化のためには特に中小企業への支援が重要。誰一人取り残すことなく日本のセキュリティ向上に貢献したい」と意欲を燃やす。(聞き手はサイバーセキュリティアワード事務局、以下敬称略)

——受賞の受け止めは?

藤井

藤井 明宏さん(サイバーセキュリティの啓発動画の企画を担当)

本当にありがたく、光栄に思っています。受賞したことを情報処理推進機構(IPA)のSNSで発信したところ、YouTube上で公開している同動画の視聴回数が倍近くに跳ね上がりました。「華麗なる情報セキュリティ対策」は、YouTubeで無料公開しており、企業や組織におけるサイバーセキュリティ研修などで活用していただくことを想定しています。ご要望いただければ動画ファイルでも提供しています。利用者へのアンケートに対して、「情報セキュリティの素人にも分かりやすい」「基本がしっかり学べる」「要点が簡潔にまとまっている」といった高評価をいただいています。IPAでは、サイバーセキュリティに関する普及・啓発を目的として様々な動画コンテンツを制作しています。ドラマ仕立てのストーリーでしっかり学んでいただく10~20分くらいの長さのものが多いのですが、今回は1本あたり2分程度のコンパクトなもので全8話の構成としました。そのあたりの狙いについては、「華麗なる情報セキュリティ対策」の監修を担当した中島さんからご説明します。

中島

中島 尚樹さん(『華麗なる情報セキュリティ対策』を監修)

「華麗なる情報セキュリティ対策」の主な視聴者として想定したのは、情報セキュリティにあまり詳しくない中小企業で働く普通の従業員のみなさまです。そのような方々に、難しいことはさておき、まずは基本的なことについて知っていただくことを第一目標としました。1分、2分くらいのコンパクトな動画にして、例えば通勤電車でスマホでさくっと見られるようにする——。そんなふうに要件を詰めていき、最終的に劇画調アニメの8本シリーズに落ち着きました。インパクトが強く、とても面白いシリーズに仕上がったと思います。これまで、個人向けには短い動画制作の実績がありましたが、企業向けでは前例がありませんでした。そこにあえてチャレンジしたのは、サイバーセキュリティ対策においてサプライチェーン全体の強靭化が重要テーマになっているからです。日本のサプライチェーンに組み込まれている多くの中小企業においてセキュリティ強化は待ったなしの状況なのです。そのため中小企業で働く普通の従業員のみなさまに分かりやすくて興味を引く内容にするという点を強く意識しながら制作に取り組みました。

——各回のテーマは、とても基本的なことを扱っていますね。

中島

セキュリティ対策で最も大切なことは「基本をしっかり押さえること」だからです。セキュリティ意識の高い方から見れば「当たり前」と思われるようなことかもしれませんが、「これだけは押さえていただきたい」というポイントを絞り込みました。動画にはあれもこれもと多くの情報を詰め込もうとせず、要点を簡潔に分かりやすく伝えることを心がけました。ただし、ストーリーを面白くすることにこだわって肝心のセキュリティ対策が正しく伝わらなければ元も子もありません。そこで、絵コンテの段階から制作会社と何回もやりとりし、セキュリティに関する専門的な観点で細部に至るまで注文をつけて完成度を高めていきました。ストーリーの面白さと情報の正しさを両立させるための作業は、かなり大変でした。最終工程のアフレコ(アフター・レコーディング)にも立ち会って、セキュリティ用語の読み方・発音にチェックを入れるところまで徹底しました。

——サイバーセキュリティの普及・啓発に対する今後の取り組みは?

藤井

IPAは2012年からセキュリティ対策の動画コンテンツの制作に本腰を入れ、これまでに「映像で知る情報セキュリティ」として34本の動画を公開してきました。セキュリティにあまり詳しくない方々にも気軽に見ていただき、要点をつかんでいただくうえで、動画はとても有効なツールです。今後も試行錯誤しながら学びのライブラリーを充実させていきたいと思います。一方、もう少し専門性の高い内容については、サイバー攻撃の手口と対策を解説した資料、ガイドラインや自社診断シートといった資料の提供を通して企業や組織のニーズにお応えしていきます。また、動画や資料などのコンテンツ提供だけでなく、例えば 中小企業向けには「サイバーセキュリティお助け隊サービス」などの施策も実施しています。これは「見守り」「駆付け」「保険」をワンパッケージで安価に提供するもので、特に中小企業を意識して導入しやすくしたものです。さらに、情報セキュリティに関する技術的なご相談に対してアドバイスを提供する「情報セキュリティ安心相談窓口」も開設しています。IPAはこうした様々な施策を組み合わせて、誰一人取り残すことなく、日本のセキュリティ向上に貢献していきたいと考えています。

——ありがとうございました!

他のインタビュー

インタビュー一覧