受賞者インタビュー



誰かを悪者にしない——サイバーセキュリティ対策の要諦

Web・コンテンツ部門 優秀賞

「我が社のプライバシー保護規制対応奮闘記!!」

作品紹介サイト

サイバーセキュリティアワード2023(授賞式は2024年3月15日に開催)の受賞者に“その後”を聞くインタビュー・シリーズ。Web・コンテンツ部門 優秀賞「我が社のプライバシー保護規制対応奮闘記!!」をプロデュースした宮岡泰治 株式会社インターネットイニシアティブ ビジネスコンサルティング本部副本部長は、「サイバーセキュリティ対策の要諦は、組織内の誰かを悪者にせず、横連携を図ること」と語る。(聞き手はサイバーセキュリティアワード事務局、以下敬称略)

——ご受賞、おめでとうございます。社内外からの反応は?

宮岡

社内の営業部隊からも、お客様からも、とてもポジティブな反応をいただきました。審査委員会は産官学の第一線で活躍されている方々で構成されているので、私どもの取り組みにある種のお墨付きをいただくこととなり、ステークホルダーに対する信用度がアップしたように思います。当社のビジネスターゲットの枠を超えて、より広い層にまで認知が広がったような手ごたえを感じています。「奮闘記!!」はウェブと冊子で提供しているのですが、あるお客様からは「重要な論点がわかりやすく解説してある。冊子を200部ほしい」という嬉しいご要望をいただきました。社内で情報セキュリティにかかわる全員に配布し、研修のテキストブックとして活用されているとのことです。授賞式にも参加させていただきました。受賞者のなかにはサイバーセキュリティをネタとするお笑い芸人さんがいたりして、難しくて硬いサイバーセキュリティの伝え方にはいろいろなアプローチがあるのだということを改めて実感しました。

——なぜ、マンガで『奮闘記』を作ろうと考えたのですか?

宮岡

私が所属しているコンサルティング部隊ではビジネスリスク、コンプライアンス全般を対象としています。その中でもプライバシー保護、個人情報保護は非常に重要なテーマなのですが、いかんせん内容が難しい。一部の専門家だけが知っていればいいという時代は過去のものとなり、組織・部門を横断的に取り組まなければならなくなっています。できるだけ多くの人に関心を持ってもらい、理解を深めてもらうためには文字ばかりの解説書ではなくマンガを上手に活用すべきだということになりました。マンガで間口を大きく広げ、ショート動画、詳細解説のランディングページ、実務セミナーなどへつなげていくという位置づけです。

ただし、マンガとはいえ、その内容には細心の注意を払いました。というのも、企業の中で情報セキュリティに対する向き合い方は部署によってまちまちで、例えば「クッキーバナー」ひとつとっても、法務・コンプライアンス部門は守り、情報システム部も守り、クッキーをマーケティング/ブランディングに活用したいデジマ部隊、広報部門は攻め、といったようにベクトルが違うのです。多くの場合、横連携が取れていないという実態があります。マンガだからといって、そういった企業内の実情とかけ離れたり、単に面白おかしいだけとか、正確さに欠けているとか、誇張があったりとか、荒っぽいストーリーにならないように気を付けました。我々は専門コンサルティング集団なので、正確、誠実、品格、品質をと大切にしたかったのです。校了するまでには、レビューにレビューを重ね、一言一句まで「これでよいのか?」という議論を重ねました。また、守りの部門には守りの、攻めの部門には攻めの信念と理屈があるのであって、誰かを悪者にしないという方針を初期段階で決めました。これは企業・組織がサイバーセキュリティに取り組むうえでとても重要な観点だと思います。それにしても、正確で、わかりやすく、しかも面白いコンテンツを作ることは簡単なことではありませんでした。我々から制作サイドに事実関係、重要論点、シナリオ案などを出すのですが、それはもう堅苦しくて難しい(笑)。何度も何度も打ち合わせを重ね、我々の意図を咀嚼していただき、上手にストーリーに仕立てていただきました。当社の宣伝色が過ぎると読むほうは白けてしまうので、そこはちょっと控えめに抑えたり。BtoB、BtoC、様々な業種業態、国内/海外、登場人物の年齢や性別など、できるだけダイバーシティに富むように設定したり。手前みそですが、半端ではない熱量を込めたと自負しています。結果、お客様から高評価をいただき、クロスセルやアップセル、海外案件への展開などにつながっています。

——素晴らしいですね。今後の取り組みについては?

宮岡

まだ中身は秘密ですが、作風を替えたマンガで次のコンテンツシリーズを制作中です。『奮闘記』をベースコンテンツとし、サイバーセキュリティ関連の様々なテーマを深堀りしていきます。動きが非常に速いジャンルなので、10年使い続けられるコンテンツというのは難しいかもしれませんが、向こう2年くらいは広く参考にしていただけるようなものを作っていきたいと思います。

——次のシリーズもサイバーセキュリティアワードへの応募をお待ちしています。ありがとうございました。

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