HACKにも裏道なりのフェアネスとユーフォリアが有る
作家 橘玲さんに聞く
――ご受賞、おめでとうございます。どのように受け止めていますか?
橘
ありがとうございます。私はサイバーセキュリティの専門家ではないのですが、最近の犯罪が現実空間からデジタルの仮想空間に移り、区別がつかなくなっていることに興味があって、それをテーマに小説を書いてみたいと思っていました。今回、サイバーセキュリティの専門家の方々から及第点をいただけたのは、とても嬉しかったです。
——これまでも、マネーロンダリング(資金洗浄)やタックスヘイブン(租税回避地)など、金融や税金を小説の題材にされてきましたね?
橘
金融に興味を持ったのは1990年代の後半からです。もう30年近く前になりますが、橋本龍太郎内閣の「金融ビッグバン」で、日本人でも海外に銀行口座を作れるようになったという話を知って、タックスヘイブンとして知られていた英王室属領のジャージー島の銀行に口座を作ってみたのです。日本の銀行口座では利息から自動的に源泉分離課税されるのに、タックスヘイブンの銀行なら税金がかからない。「なぜ、こんな場所が世の中に存在できるのか? どんな仕組みになっているのか?」を知りたいと思いました。 その頃、「個人」と「法人」という二つの“人格”を使い分けられることにも興味を持ちました。例えば、私のような個人事業主が自分を取締役にしてマイクロ法人をつくると、法的には個人と法人という二つの人格が生まれます。この場合、法人から個人に役員報酬を支払うわけですが、個人の報酬を減らせば法人の所得が増え、逆に個人の報酬を増やすと法人の所得が減る。個人所得税と法人所得税は税率などのルールがかなり違いますから、両者を見比べて一番有利な形に納税方法を設計することができる。税理士や会計士は皆知っていることなのでしょうが、「これは面白い!」と思っていろいろと調べ始めました。 私は、物事の「仕組み」に興味があるんです。なぜタックスヘイブンなどというものがあるのか、なぜ二つの人格を使い分けることができるのか、その仕組みを自分で調べてみて、それを題材に小説や経済書を書いてきました。
——なるほど。橘さんの大学での専攻は「ロシア文学」とのことですが、金融や税金の仕組みに興味を持たれたことと、なにか直接繋がらない気がするのですが・・・(笑)。
橘
高校生の頃は、世の中のことを全く理解できていない、ほんとに世間知らずの若造だったんです。だから就職になんの役にも立たない“露文”なんかを選んでしまった。もう少し賢かったらそんなところには行かなかったでしょう(笑)。高校時代、ドストエフスキーにはまって「翻訳でこんなに感動するのだから、原典をロシア語で読めたらどんなに素晴らしいだろう」という考えだけでロシア文学科を選んだんです。 大学に入ったのは1977年で、フランス現代思想の「ポストモダン」ブームの最初期でした。社会科学系のサークルに入ったら、皆、ミシェル・フーコー、ジャック・デリダ、ジャック・ラカン、ドゥルーズ=ガタリなんかについて語り合っていて、全く理解できませんでした(笑)。でも、どうやらそれが最先端の思想らしいということで、当時、その界隈で一番洒落ているとされていた『現代思想』や『エピステーメー』を読むようになりました。「自分は、有象無象の一般人が知らない世界の秘密を知っているんだ!」という、今で言う意識高い系です(笑)。 そんな学生だったので、同級生が一斉に「就職活動」を始めたときも、なにが起きているのかまるで理解できなかった。その頃の就活は大学4年の9月に始まって10月か11月には終わっていたので、みんながスーツを着てバタバタしているなと思っていたら、あっという間に取り残されて、落ちこぼれの出来上がりです。 とりあえず4年で卒業できそうだったので、アルバイトでもしながら暮らそうかとぼんやり考えながら、正月休みにアパート近くのマクドナルドで夜間清掃のアルバイトをしていました。そうしたら夜中の2時くらいに、若いエリアマネージャーが流行りのスポーツカーで店舗に乗り付けてきた。革のブーツを履き、腕にはロレックスを光らせていました。 帳簿のチェックの合間にバイトスタッフの経歴書も見たらしく、私を呼んで「君、ワセダなの? 4年生だよね、卒業できるの?」と声をかけてくれたんです。「卒業するつもりですが、就職は決まってません」と正直に答えると、「だったらウチに来る?」と軽い調子で言われました。 就活シーズンはとっくに終わっていたので、そんなことできるんですかと驚いて聞くと、「簡単だよ、俺が推薦すればいいんだから。まともに就活して入社してくる連中に、ろくなのはいない。君みたいに少しおかしなやつのほうが、社会に出てから伸びるんだよ」みたいなことを言われて(笑)。 ただ、さすがに夜中の2時に帳簿を調べるような仕事は無理だと思って、丁重に断りました。すると、「とにかくスーツを買いなよ。新聞の三行広告で出版社の募集を探して、電話かけて、面接で一生懸命働きますって言えば入れてくれるからさ」って、就職の仕方をアドバイスしてくれたんです。 言われた通りスーツを買って、出版社の募集広告を探して電話をかけ、面接に行ったら、新橋の雑居ビルにある出版社にあっさり就職が決まりました(笑)。 社員20人くらいの怪しげな出版社で、編集部は私のようなワセダの落ちこぼれの吹き溜まり、まさに出版界の最底辺でした。それでも社会人として働き始め、広告代理店など外部の人からもいろいろなことを教えてもらい、失敗して怒られたりしているうちに、ようやく世の中の「現実」が見えるようになってきました。 それまではいわば「妄想」の世界に生きていたので、世の中の仕組みとか、働くってどういうことなのかとか、なぜ給料がもらえるのかとか、そういうごくごく当たり前のことを全く理解できていなかったんです。そこで初めて、「このままじゃヤバい」と気づきました。 普通の人たちは、高校ぐらいから世の中の仕組みをちゃんと分かっていて、頑張って受験勉強して、法学部や経済学部に行って、銀行とか商社に入ろうとする。私はバカだからそういう常識がなかったんですが、最悪なのは、自分がバカだってことにすら気づいていなかったことです。 こうして社会人としてのスタートから落ちこぼれたわけですが、いまさら気づいても手遅れですよね。それで、「自分みたいなドロップアウトした人間がなんとか生きていくには、世の中の仕組みを自覚的・意識的に調べて理解しなければならない」と思うようになったんです。
——それは、どこの誰が決めたのか分からない常識やルールを何も考えずに受容し、従属することへのアンチ、、、橘さんの闘争だったのでは?
橘
そんなにカッコいいものではないですね(笑)。普通は、みんながやっていることが正しいんです。うまくいくから「常識」になるのであって、うまくいかないものを真似するわけがない。だから、「みんながやっていることが最適解」とデフォルトで考えるのは当たり前です。だけど、どういうわけかそういうふうに考えることができなくて、露文を選んだり、ポストモダンにはまったり、就活しなかったり、どんどんマイナーな選択肢にはまっていくわけです。 ただし、ドロップアウトしたマイノリティとはいえ、それなりに生きていかなくてはならない。幸運だったのは、当時の出版業界には、同じようなドロップアウト組がたくさんいたことです。それで、いまさらメインストリートを目指しても手遅れなので、自分のような人間でも生きていける「ニッチなチャンス」を探すようになったということかなと思います。
——新橋の雑居ビル時代からの展開は?
橘
25歳のときに宝島社の『別冊宝島』編集部に拾ってもらって、ムックの編集をやっていました。20代は80年代バブルの時期で、出版業界も好景気で本も売れてとにかく楽しかったのですが、30代半ばになった頃、このまま10年、20年ずっとやっていけるのかと不安になってきて・・・。社長(故・蓮見清一氏、宝島社の創業者)は面白い人で、決して嫌いではなかったけど、凄いワンマンだったので(笑)。 それで、転職や独立を考え始めんですが、そのときになって、これまで人生の経済的な側面を全く考えてこなかったことに気づきました。「好きなことをやっていれば給料をもらえる」みたいに思ってましたから(笑)。それで、株式市場についても勉強を始めました。 書店に並んでいた株の本を何冊か読みましたが、どの本を読んでも「自分が尊敬する経営者の会社の株を買いなさい」と書いてある。その頃、西和彦さんが翻訳した『ビル・ゲイツ未来を語る』(1995年、アスキー刊)を読んだんです。世の中にはこんなに賢い人間がいるのかと感動して、「じゃあ、Microsoftの株を買おう」と思って、御茶ノ水にあった大手証券会社の支店を訪ねました。 カウンターにいたおじさんにMicrosoftの株を買いたいと言うと、「何ですか、その会社?」と訊かれ、アメリカの会社だと答えると、「お客さん、そんな株、日本で買えませんよ。株をやるならちゃんと勉強した方がいいですよ」と説教されて、『初めての株取引』みたいなタイトルのパンフレットを渡されて追い返されました。そのとき、海外の商品は個人輸入などで簡単に買えるのに、なぜアメリカの株は日本で買えないのか、、、違和感を覚えました。 その頃、個人投資家は大手証券会社から“ゴミ扱い”されていました。証券会社の仕事というのは、企業やお金持ちの資産を運用することであって、金のない個人など相手にしていませんでした。営業担当者は、インサイダーすれすれかインサイダーそのものの情報を掴んだら自分の得意客に耳打ちして儲けさせ、自分たちは手数料を稼ぐというのが定石でした。 その2~3年後、ネットのマニアックな掲示板で、アメリカのネット証券に口座を作れば米国株を買えるという情報を知って、自分でもやってみました。たしか1997年のことだと思いますが、E*TRADEというネット証券に口座を開設して、ようやくMicrosoft株を買うことができたんです。 それから、IntelやDell、AOLといった当時の人気銘柄を手あたり次第に買いました。インターネットバブルの時期だったので株価はどんどん上がっていきます。日本では山一證券の自主廃業などバブル崩壊の余波を受けた金融危機で大騒ぎでしたが、私の資産ポートフォリオは膨らむ一方でした。 そして日本にもネット証券が誕生すると、今度は日本のIT株を買いました。アメリカで起こったことは少し遅れて日本でも起こる――まさにタイムマシン投資法です。アメリカで儲かって、日本でも儲かって、ダブルで儲かる素晴らしい時代でした(笑)。 その当時、アメリカのネット証券を使って米国株に投資している個人投資家はごくわずかでしたが、そのために必要な情報はすべてネットにありました。インサイダー情報のような不公平な手段ではなく、フェアなやり方で、なおかつ、他の人が知らない知識を入手して、それによって大きな富を獲得できたわけです。当時の米国株コミュニティには、ある種の「選民意識」というか、ユーフォリア(陶酔感・幸福感)がありました。
——その経験が、『HACK』の創作にもつながったのですか?
橘
そうですね。「HACK」という行為の根底には、システムの知られざるバグを見つることそのものを面白がるという遊び心があると思うのです。ハッカーには、知識や技術によって「normies(普通の奴ら)」の上を行くという気概というか誇りみたいなものがあって、レベルは違うものの、自分にも同じものがあるように感じます。 そもそも出版業界の最底辺からスタートしたのだから、普通の人と同じようにやっていたら、そのままずっと底辺のままです。挽回するには、normiesと違うことをしなければならない。 法人と個人の税制というシステムのバグを見つけ、そこにある歪みをうまく活用して利益を得るというのもその一つです。よく誤解されるんですが、これは違法でも脱法行為でもなく、税法に則った節税です。国税のエラい人からも、「節税は納税者の権利なのだから、どんどんやってください」って言われましたから(笑)。 システムにバグがあれば、それを利用する者が出てくるのは当たり前です。逆に言えば、ハッカーが「ここに欠陥があるよ」と教えるから、バグが修正されて社会システムが改善されていくのです。 はじめての小説『マネーロンダリング』(2002年、幻冬舎刊)で相続税をゼロにする方法を書きました。これはスイス人のプライベートバンカーから聞いた手法で、アメリカと日本の税制のバグを組み合わせることで、財産を無制限に無税で子供に移転できる裏技です。 プライベートバンカーなら皆知っていることで、「こんな簡単な方法があるのに、なんで相続税を払う日本人がいるんだ?」と真顔で訊かれました(笑)。それを本に書いたら、何年か経ってちゃんとそのバグは修正されました。そうでなければずっと、一部の金持ちだけがおいしい汁を吸い続けていたかもしれません。 法人と個人という人格を使い分けるテクニックは、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計入門』(2002年、幻冬舎刊)で書きましたが、こちらのバグは20年以上経った今も修正されずそのままです。なぜかというと、地元の商店会など自営業者は、与党から野党まですべての政党の支持基盤なので、政治家はその既得権に触れることができないからです。だから、このテクニックはいつまででも使えるし、おかげで本も売れています(笑)。
——橘さんは「ここにバグがあるよ」と知らしめる側に立っていますが、逆に、密かにおいしい汁を吸う側に回ることもできたのでは?
橘
1998年にタックスヘイブンに銀行口座をつくる方法を本で紹介して、かなり話題になったんですが、するとある日、会社に高級なスーツを着た怪しげな人が訪ねて来ました。その人は金持ち相手にタックスヘイブンに銀行口座を作る手伝いをして、1件あたり200万円くらいの報酬を受け取っていたんです。ところがそれと同じ方法が、私のつくった1400円の本に載っている。「こんなに金になるおいしい情報をなんでタダみたいにばら撒いてるんだ。俺と組めば1億でも2億でも儲かるのに」と怒られました(笑)。 それを聞いて、世の中にはこういう価値観の人もいるんだと勉強にはなりましたが、ぜんぜん面白そうには思えなかった。私は出版の人間なので、「ほら、世の中にはこんなに面白いことがあるよ」と本に書いて、読者が喜んだり驚いたりするのが楽しいんです。
——『HACK』には「世界はHACKされるのを待っているバグだらけのシステムだ。」という名フレーズが出てきます。橘さんが「面白い!」と感じるのは、世の中の仕組みに内在する「歪み」の部分に迫ることなんだなと腑に落ちました。マネーロンダリング然り、タックスヘイブン然り、法人と個人の税制然り。
橘
そうですね。最初は金融市場のバグでしたが、暗号通貨の登場でいろいろなことが仮想空間に移ってきて、バグはさらに増えていると感じます。 そして、世の中の価値観も大きく変わりつつあります。HACKはあくまでも「裏道」で、賢い人は「王道」を歩いている。ちゃんとした大学を出て、一部上場のちゃんとした会社に入って、退職金と年金をもらって悠々自適に暮らす・・・。それが世の中のマジョリティであって、そういうことがうまくできなかった私のようなマイノリティが、自分で裏道を探してなんとか生きていたわけです。 ところが最近、王道が必ずしも王道ではなくなってきた。新卒で入社してから40年も一つの会社で面倒を見てもらうこと自体が不自然だし、人生100年とすれば定年後にまだ40年もある。王道、すなわち既存の価値観が揺らぎ、かつての裏道を選ぶ人が増えています。特に若い人たちは、そういう変化に対して敏感に反応しているように思います。 1990年代終わりくらいに米国株の売買をやっていた時のユーフォリアについて語りましたが、それと同じものはビットコインで成功した人たちにも感じます。ビットコインは基本的に、すべての情報が公開されているフェアなゲームで、ブロックチェーンというイノベーションが金融市場や社会・経済を変えていくことに最初に気づいた者たちが大きな富を手にした。真の報酬は、「選ばれし者」としての自己実現なんです。『HACK』の主人公には、そういう生き方を投影してみました。
——HACKとは何か、人はなぜHACKするのかという本質に迫るものですね。『HACK』に対する書評には、「お金・自由・幸福の比重について考えさせる作品だ」というものもありました。
橘
世界には使いきれないようなお金を持っている人がたくさんいますが、お金があれば必ず幸福になれるわけではない。例えばビットコインで10億円の利益を上げた若者が、節税のためにタイやベトナム、ドバイなどに移住したとしましょう。これだけで、完全に合法的に、日本の大卒サラリーマンの生涯収入くらいの税金がゼロになりますが、その選択で本当に幸せになれるのか・・・。 FIRE(Financial Independence, Retire Early)という言葉も流行っています。経済的に自立して、会社を辞めて自由になるというのですが、仕事をしない人っていうのは「失業者」ですよね。一生懸命にお金を貯めて、なぜ失業者になりたいのか・・・。 いくらお金があっても、仕事もせず社会とのつながりも断ち切ってしまったら、退屈な人生が続くだけのように思えます。お金は無いより有った方が良いに決まっていますが、多ければ多いほど幸せになるわけではない。そういうところが面白くて、「働かなくても生きていけるくらいのお金があって、退屈している主人公が、とんでもないトラブルに巻き込まれていく」というのが私の小説の基本プロットなんです。
——『HACK』を執筆するための下調べにはかなり時間がかかったのでは?
橘
私は外向けに“顔出し”していないので、テレビ、講演、対談などは基本的にお断りしています。そうなると、本を読むか原稿を書く以外にやることがないんです。誰にとっても平等に1 日は24時間で、自由に使える時間は最大10時間ぐらいでしょう。私の場合は余計な仕事がないので、その 10時間をすべて好きなことに使えます。いわゆる「エッセンシャル思考」(本当に重要なことに集中する思考法)です。 世の中には私よりも賢い人はたくさんいますが、そういう人は会社や役所、あるいは大学などでいろいろなことをやらなければならず、ものすごく忙しい。これだと、何かに興味があっても細かいところまで調べる時間がない・・・。そこである時、気づいたんです。私の場合、すべての人的資本、時間資源を好きなことに投入できるのだから、それだけでかなり上のレベルに到達できるんじゃないかと。 ですから、『HACK』の取材・調査にはたっぷりと時間をかけました。でも、ストーリーの骨格が見えてきてからは、3カ月くらいで書き上げました。
——1日の時間を自分の好きなことだけに使えるというのは、それこそが「自由」の獲得であり、究極的な「幸福」なのだと思います。
橘
私は幸いなことに、サラリーマン時代も嫌な仕事を我慢してやるということはほとんどなかったし、物書きになった今はそういうのは全くなく、自分がやりたいことだけをやっているから恵まれている方だと思いますが、だからといって毎日が幸せなんてことはありません。そもそも「幸福」とは何かというところから突き詰めないといけないんですが、最近では、一人ひとりの幸福感は遺伝によってほぼ決まっていているとされています。幸福度が高い人はどういう状況でも幸せに生きていて、幸福度が低い人はどれだけ成功しても満足できない。 イーロン・マスクは個人資産130兆円というとんでもない大富豪ですが、あまり幸せそうに見えないし、本人もうつ病の治療をしたことを告白している。私の知り合いにも凄いお金持ちがいて、もちろん不幸とは言いませんが、だからといってうらやましいとも思わない。 幸福度が生まれつき決まっているんだったら、幸福になろうと頑張ること自体にあまり意味がないのかもしれない。じゃあ、生きる目標とは何なのかっていうことになるんですが、一定程度の経済的な独立を達成したら、意義のある仕事をするとか、誰かのために役に立つとか、「自分の幸福」以外のところに目標を見つけるようになるんじゃないかと思います。
——『HACK』の裏テーマは「幸福とは何か」という深い問いかけだったのですね。次回作も心待ちにしています。あらためまして、このたびのご受賞、おめでとうございます。
HACK
橘玲 著、幻冬舎 刊
海外で暮らすハッカーが、特殊詐欺で稼いだ違法資金のマネーロンダリングに関わることから物語が始まる。テクノロジーとサスペンスを掛け合わせたスリリングなストーリー
作品紹介サイト
作品紹介サイト
サイバーセキュリティアワード2026の表彰式が3月16日に開催され、大賞1件、部門別最優秀賞4件、審査委員会特別賞1件、部門別優秀賞7件の栄誉が称えられた( 表彰式レポートはこちら )。フィクション部門 優秀賞に輝いた 『HACK』(2025年、幻冬舎刊)の著者 橘玲(たちばな・あきら)さん に執筆の経緯を聞いた。(聞き手はサイバーセキュリティアワード事務局、以下敬称略)